「 溺れる家。 」/PULL.
 






亀の行列が通りすぎるまでぼくの口はいつも開いている。

また押し入れの中の牛が泣いている眠れない明日は街に行く。



沼に沈めた家から真っ先に逃げ出してきた家具と旅に出る。
溺れる机が吐き出したドラえもんはぬらぬらと膜に包まれ。


砂糖細工のベッド紅茶に沈めぽろぽろと眠り夢に解け。

キッチンの片隅で寝息を立てる食材としてのあなたの罪。



冷凍庫の中で解凍されるのを待っているS・キング。

本棚はぼくを捨て旅に出る「わたしの旅はまだ書かれていない。」












           了。


戻る   Point(4)