水面を漂う糸/
皆月 零胤
でも
今だけは離さないで
離さないで
今だけは
見上げた水面でゆらゆらと
揺れる月へとゆっくりと
色を失くして解けた糸が
昇る手前を横切ってゆく
小魚たちが群れる雲
水の中では泣いたっていい
どんなに澄んだ空気さえ
今の僕らと関係ないし
他のことはもう
どうでもいい
何もかもを焼き尽くそうと
息をつく暇もなく
本能のまま絡み合う
二匹のカナシイケダモノ
熱い吐息の泡沫が
夢幻の夜に消えてゆき
消えゆく夜の水面をただ
漂うだけの記憶の糸
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