路傍の月/水島芳野
 
雷鳴の
轟く深い谷底で
切り裂くような悲鳴を浴びて
今でも竜はそこにいる。

生け贄の
羊を優しく憐れんで
零した滴は干からびた
見る影もなし正の道

絆があるから迷わない?
いいえ、あなたは愚かしい。
そのままどうぞ連れ去って
月も知らない闇の縁
空を遮るあなたの声は
奮えるように高ぶって

足を掬うは見えない糸か
きっとどこにも行けはしない。

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