電話/湖月
だれも 電話にでなかった
冷たい風は夏服のわたしを悲しくさせる
雨のにおいは記憶のなかにしか優しさをもたず
思いつく限りの番号を履歴にのこして
だれもだれも忙しいなかで一人だけ時間の空白を感じる
急に携帯電話を壊してしまいたい衝動に駆られるけれど
いつも思いとどまった
その中でしか繋がらないひとがとても大切だと心の底で
たった一つの糸が千切れないように守っている
空白のわたしにその人がいなくなったときに
携帯電話は壊してしまおうと思う
いつまで泣いたら気付いてもらえるの
あとでかかって来た電話に笑いながら こころの底でおもう
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