人殺しのカクテル/不可思議/wonderboy
 
一時間だったかもしれないし、一日だったかもしれない
ベルが鳴ったので玄関から外を覗き込んだ
死んだはずの彼女がそこに立ってたんだ
「まぁ中に入れよ、ずっと待ってたんだ」
人目で彼女が幽霊だということはわかった
「何か飲むだろ?簡単なカクテルでいいかな」
「好いわよ」雨で濡れた髪が奇麗だった
彼女には足があったし、触れることもできた
でも間違いなく彼女は幽霊そのものだった
たった一つ殺す前と違いがあるとすれば
死ぬ前よりずっと、生きてるみたいだった

絞め殺した女の子の幽霊と交わる
ブルーレイよりも鮮明な快楽へ導く
一字一句なぞるようにディック握る手つき目つき
突き出した唇の内に住む堕天使
精神と生と死を整頓したいがために
ビデオカメラセットし、ことに及ぶベッドシーン
しれっとするも幽霊とは思えない舌使い
悪戯に微笑む顔に興奮を隠せない

朝日が胸に刺さり、ふっと目を覚ました
すでに彼女の姿はどこにもなかった
不確かな彼女の確かな存在感が
部屋の中にかすかに残っていただけだった

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