僕らの休日/小川 葉
りの町へ歩いていった
おいしいラーメン屋さんがあるらしかった
僕が産まれたときからずっと
一緒に食べに連れていきたかったらしかった
けれども区画整理のため
店はもうなかった
少しうつむいてしまった父さんの背中に
僕はまた鼻をくっつけた
華やかな駅前に出ると
この町にもパルコができたんだ
そう言って父さんは
まぶしそうな顔でビルを指差す
僕はパルコが何か知らなかったけれども
きれいだねとだけ言った
はじめて都会にきたような
若者のような細い背中に
僕はまたホッペをこすりつけた
駅まで母さんが迎えにきていた
僕は父さんの背中を降りて
母さんの胸に抱かれた
野球たのしかった?
ラーメンおいしかった?
母さんが尋ねても
僕と父さんは目を合わせて
照れくさそうに笑うだけだった
家に着いてテレビを見ると
楽天は逆転負けしてた
けれども僕らは大勝利だった
母さんがつくってくれた
焼きそばをほおばりながら
僕らは目を合わせて
そう思った
戻る 編 削 Point(16)