預言かもしれない/佐々宝砂
ためいきをつきたいところだが
煙草の煙を吐く
自嘲したいところだが
天井を仰いでみる
大きな家蜘蛛が
照明の近く動かずにいる
どこからか
中空に浮かぶ腕があらわれて
書き記すだろう
メネ・メネ・テケル・ウパルシン
たぶんきっと最悪の事態になるだろう
勝手に数えやがれ
何でも好きに量りやがれ
分割できるような財産とてないけれど
それでも
捨てるわけにはいかないこの生
賭け金はもうない
財布の中はすっからかん
結局自嘲するところかもしれない
ドラゴンよろしく鼻から紫煙吹き出して
もう一度天井を仰いで
くちびるから漏れる言葉は
エリ・エリ・レマ・サバクタニ
ちがう
そうじゃない
確信は持てないけれど
姦婦たれと
悪魔ではない者がささやく
そのはっとするほど生ぐさい息に
自分を預け渡して
ニガヨモギのような体液を飲み干す
(発出 蘭の会2008 9月月例詩集「生」
http://www.hiemalis.org/〜orchid/public/anthology/200809/)
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