微炭酸/
小川 葉
秋に夜が訪れて
炭酸水が流れこむと
暗い海の底
音もなく稲穂が揺れる
えら呼吸をはじめる
溺れないように
母が子守唄を歌う
目を覚ますまで
魚になる
泡をこらえて
知らない世界に行って
帰ってくる
やがて夜が明け
わたしたちの微炭酸に
朝の光が差しこむと
秋の実りが
音をたてて風にざわめく
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