微炭酸/木屋 亞万
コップに耳をあててごらん
サイダーの歌声が聞こえてくるでしょう
宝石の鋭角が弾ける音
磨かれていく耳、頬、瞳
夏と炭酸は相性がいいから
海も花火も西瓜も朝顔も夕立も
炭酸と共存していてもおかしくない
親密さを感じる、夏が弾けていく
円形の側壁に泡のコロニー
ピカピカ小粒の二酸化炭素
砂糖水とはボトルの中だけ親密で
蓋が開くと同時に吹き出していく
蓄積された衝撃、揺らぎ、すれ違い
弾けた泡は二度と帰ってはこない
世界と混ざってもう戻らない
ボトルから出てコップから旅立って
別々の道、異なる世界へ歩み出す
一日も経てばボトルの炭酸は弾け終わる
儚い明
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