海辺の杭/水町綜助
海辺の杭だった
薄い色をした砂浜に
もうどこに打ち込まれたのか
砂に埋もれてしまって
分からない
どれだけの長さだったのか
その突き刺さった底が
砂に埋もれてしまって
分からない
錆を吹いている
肌をざらつかせて
赤いと言うけれど
見れば汚い色だ
それを防波堤に座って見下ろしている
潮風が吹いて
沖合いで「どう」という重い音が響いた
この鼓膜のように杭も揺れて
砂の一粒でも流れ落ちたろうか
打ち込まれた先がわかるとき
砂はいくつ落ちるか
どこまで錆びているか
何のために
漁師が波打ち際を歩いていた
左手にびくを提げて少し猫背で
時折身
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