奥にあるコーナー/詩集ただよう
ていた。
神輿にふんどしに、子供達の法被の漢字が踊る商店街の一本道。街路樹に寄り添うように歩き過ぎていく女子中学生が細い足を腿まで出して、少しく化粧ののった顔で、その道を動く足元を追いながら、誰かと楽しげに電話をしていた。その夜行き着いた別の街で彼女と私は寝た。
冬になり、街路樹の葉もなくなっていた。私は彼女と二人暮しを始めて、それに慣れてきていた。彼の死因が医者による過失だったという報告を今更受けても、私は彼が幸せだったと思う、と彼女に漏らした。優しいことから始めよう、そうすれば、きっと誰かの為になる。そのとき彼女はそんなことを言っていた。長く、その裏で、彼女は女優になる夢に諦めかけてきていた。私も薬剤師になり、彼女と結婚することに、諦めかけてきていた。何も変わらないその冬に、私は突然彼女に別れを切り出した。彼女は笑顔でうんと言った。ありがとうと言った。
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