ナナカマド/Utakata
 
んな疑問が頭に浮かぶ。



5.
走っていった蜥蜴が戻ってきて、ともだちの肩へ這い登っていくと耳元で何かをささやく。信じられないほど細かな白い歯がうすくらがりのなかでちかちかと瞬くのが見えるが、ささやいている言葉の意味はここからはわからない。ともだちは小さく頷いて立ち上がると、そろそろ行かなくちゃといって店の外へと歩き出そうとする。店を出る間際になって何かにふと気付いたように立ち止まると、ともだちはまたこっちのほうに戻ってきて、馬鹿みたいにテーブルの上に置かれたままの掌の上に、またひとつ新しい七竈の実をひと房落として小さく笑うと、今度は本当に店を出て行ってしまう。最後の瞬間に、鼠鳴きにもにた蜥蜴の鳴き声が聞こえた気がした。残されたって何ができるわけでもなく、ただ手の中に残ったものが少しずつ損なわれてゆくのを黙って見つめることしかできない。



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