胎児の夢/
小川 葉
子供の頃
よく胎児の夢を見た
まだ知らないはずの家族が
言葉ではない言葉で
話す声を聞いていた
その姿も見えていた気がする
胎児の僕は
母の子宮の中で
永遠に産まれないまま
時だけが果てしなく過ぎゆく
夢を見ていた
産まれた頃には
家族はおろか
世界さえも消失してるような
死とは何かを
その胎児はすでに
知っているのだった
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