電車/アンテ
 
とても話しかけられる雰囲気じゃない
電車は単調に走りつづけ
つり革にただ掴まっていると
息が苦しくなって
じっとしていられなくなる
あるいは本当に空気が薄くなっているのかもしれない
気の遠くなるような時間をなんとか耐えて
手とつり革が一体化しはじめた頃
ようやく車掌の声が流れる
聞いたこともない駅名が告げられる
窓のそとにホームが現れて
電車が減速してやがて止まる
ドアが開く
外の空気がとても新鮮に思えて
我慢できずに外へ出て
深呼吸をくり返していると
とつぜん背後でドアが閉まる
ぼくを残して電車は走り去ってしまう
ホームのあちこちに
ぼくと同じように残された
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