壁のポスター/水町綜助
 
この部屋の中にアナログ時計はなく
壁には40年近く昔の音楽祭のポスターが貼られているだけ
花に囲まれて幸せそうな
薔薇の花冠を被った骸骨の
風化させる横流れの青い光に
少し小首を傾げた笑顔

一年という時間の中に
体温という放物線を描くなら
時折の例外を除いて
夏から夏への繰り返しを
もう片手では足りないほど
ある一つの夏から数え

そこからはもう同じような高さ
ちょうど郊外のニュータウンの屋根の並ぶような
丘の上から見た平熱

ある一つの町にいる
そこから海も見た
いまその町に暮らして
ここに移り住み
海へ行き
島へ旅行で渡ったりもした
山はあまり
[次のページ]
戻る   Point(7)