終わりの夏/二瀬
 
窓辺の四角い夜に うなだれた手をかざすと
しずかに風は 
終わりの夏を打ちつけてくる

部屋中を駆け巡る息づかいは
いつもそこに置き忘れてあるから
死をつつましく夢の先に灯して
ただ耳をすましています
そしてときおりわたしは、あなたの静けさを
わたしのなかに垣間見ているのです

忘れることは罪のようでした
忘れないことは義務のようでした

窓辺の外に身を乗り出せば
一面にしかれた夜の先に
月の光がこぼれ落ちて、花が咲いた
なぜ離してしまったのだろう
ひとり手のひらを耳に当てる

まだそこにあるかもしれない

耳の奥で、昔の姿を探し出そうとして
風があな
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