きおく/
湖月
小さなひかりに 記憶を混ぜて
手のひらの感触をおもいだす
辿った道は短く 景色は春だった
横たわる体から流れるものは
赤くもなくただぼんやりとした脱力感だけで
遠くに消えた心は掴めば千切れるほどに脆い
まだ手元にあるものは欠けてしまった
完全なものは春の記憶だけ
その たった一つの記憶だけは現実を支配し続け
部屋の中で記憶に埋もれることを心は望んでいた
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