夜が遠い/飯沼ふるい
 
駅前の公園で
大人になることをまだ知らない僕は
彼女の帰りを待つ友達のふかした
煙草の煙を吸い込んで
萎れた茎のような心を直視してしまう
どうしようもないから
雲の多い夜空を見上げた
それは悲しみだ、
逃げ道を探すように
なぁなぁに過ごしていた
青春への。
 
苦い残り香が奥歯に染みて
思い返すのは
生きることの主人公でいられた
幼い僕の
したたかな明るさ
 
ベンチに座る僕の背骨は
次第に膨らむ
その巨大な幻を背負い込み
身を引きちぎるような感情に一閃
また一閃と
えぐられるたび
まるく、まるく、
頼りなく萎れていった

猫背の僕に苦い煙が
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