晩夏/野狐禅
堤防のコンクリートに
へばり付いた火花のあとは
子供達の嬌声を捲いていた
水面を跳ねるきらめきは
冥く、果ての無い空間から
生まれ、育む
風はもう見えない
遠く、太平洋沖のあの島を通り
極楽鳥の綿毛を撫で
小麦を揺らすだろう
君と僕を隔てた
言葉に出来ない劣情は今夜
アフリカの少年や
キエフの娼婦たちの心を
同時に貫く
狙いすましたように
珍しい事ではないのだ
出会って別れて
また出会って
僕らは営みを紡いでいく
隔てたものに名前はついていないが
それは確かに存在して
幾千もの別れと
新しい出会いを生んできた
さよなら。
あの風がまた吹くのなら
僕たちは出会えるだろう
あの橋脚の下で
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