八月の絶唱/飛鳥 彰
 
小枝にあそぶ


薄紅の雲のようなる
シモツケソウ
葉月の夢をこぼして咲けり


脱皮せるコエゾゼミあり
きみどりのうるわしき羽根
幹にひかりおり


抜け殻を空蝉と呼ぶ
むかしより生身なき身の
偽りの宿


高原の花をもとめて
とびゆくのは 豹紋蝶と
いう名の蝶なり


ユリ科なる
咲くやタマガワホトトギス
鳥にも似たる斑点まぶして


目も彩に
ヒュッテの近場に咲く花は
マルバダケブキ黄色が躍る


白樺にはりつき鳴くのは
コエゾゼミ
節なくギィィーと鳴きまくるかな


くさむらにオレンジ放つ
コオニユリ
目もあざ
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