夜叉/星月冬灯
 
 もっと狂うがいい!

 海よ

 もっと荒れるがいい!

 そうしてわたしに力をおくれ!


 今は夜叉と成り果てた我が身

 片手に赤児を抱き

 片手に斧を持ち

 涙枯れ果てた我が身に

 今夜も新しい生き血を・・・


 嗚呼

 憎らしや

 嗚呼

 恨めしや


 我が罪

 人の業

 総て焼き尽くされるまで

 我は夜叉となりて

 我が児を護る


 赤いおべべを着せられない

 悲しみを

 笑いかけてくれない

 切なさを

 今夜も生き血で埋める

 悲しい女

 こんなに哀れな女が

 他にいようか


 恨んでも恨んでも

 恨み切れず

 ただ生き血を求める


 赤いおべべを着た赤児はどこにおる

 わたしのかわいい乳呑み児は

 今夜も母さんが

 おまえの耳元で

 子守唄を歌ってあげる・・・


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