凡人のジレンマ/ブライアン
自分の外の世界の利害関係は、いまやあまりに難解で考えようもない。人々は感覚を捨てて興奮に走り、何が何でも楽しもうと躍起になっている
「囚人のジレンマ」 リチャード・パワーズ著 柴田元幸・前山佳朱彦訳
空を飛びたいと思った。空が青い時に。
雨が降った。空には飛べなかった。
高層ビルが地上数十メートルから見下ろしている。
空を飛びたいと、思った。
だが、雨が落ちてきた。
飛べるわけもなかった。
さあ、なぐるなら、なぐればいいさ
と怒鳴る声がする。
聞こえないふりをしたイヤホンから、
プリーズアフターミー、と声が鳴る。
地上に足があるはずだった。
空を望んでいたのも、はるか過去。
走る足は飛び立つためか、ただの足か。
飛べるわけはないさ、と
あきらめたわけではない。
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