ゼフィルス讃歌/飛鳥 彰
ゼフィルス讃歌
二月のすこし澱んだ灰色の空に 雪が舞う
掌にそっと受けてみれば
それは はかなく消えてしまいそうなゼフィルス
この道をあまたの白い蝶が翔んでいく
さっきまでの青空はどこへいったか いまはない
早春の淡い陽射しに誘われて
高い樹々の梢にとまって
あたりをうかがっていた蝶たちが
あとからあとから舞い降りるので
空はいつしか真っ白な絨毯を広げたみたいになるのでした
蝶は なんど翔びたっても
また同じところにもどってくる
そして わたしもまた戻ってくる
悲しみだとか愛おしさを道連れにして
厳しく寒いときは 何処に隠れていたのか
樹
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