切れる代官山の愉快犯/詩集ただよう
りと東京タワーのイルミネイションが2016だったのが、妙にマッチしていた。降り立った渋谷センター街近くの通りの脇で、カメラを鞄にしまい、あと二日、何をしようか考えた。
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ひび割れた白縞を踏まないよう横断歩道を渡っている。青年は坂をつらつら上がり、観たことがあると感じたカフェテラスの前で、休憩がてら花壇のへりに腰掛けた。向かいにはVIA BUS STOPのショウウィンドウ。真夜中である。鎗ヶ崎交差点でモデルと擦れ違っていたことに青年ははたとマネキンを見たとき気が付いた。幾分疲れているようだった。初めて訪れた代官山界隈に並ぶ街路樹はきらきら彩られている。青年は鞄を足元に煙草をくゆらし、手元に持ったディスプレイを眺めていた。新着ニュースが文字でさらさら流れ、今朝の模倣犯が捕まっている。やはりキャスターの言った通り、くだらない、単なる愉快犯であった。青年の眉間で何かがほどけた。
フィルムをすげ変え、シャッターを切りながら、青年は辺りを散策した。代官山は無人である。
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