新しい町/doon
丘に一本の木がある
見向きもされず
子供が木に登ることも無くなった木
紅葉もしない木の回りはやがて
町になっていく
道が出来て町は活気に満ちた
木は独りになった
区画整理がまた始まり
どんどん住みにくくなった木には
虫たちも去っていった
とうとう木を切ろうという話になった
みんな賛成だった
夏のある日
木は切り倒された
夏の暑い日であった
倒れた拍子に
木を取り囲んでいた町人全てに
青臭い香りが舞った
誰かが言った
「子供の頃に嗅いだ香りだ」
活気とともに
町は幼い頃の懐かしさを失ってしまった
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