雨が降るとき、きみは/Utakata
 

ゆっくりと近づいてくるのを
じっと待っている
屋上
それを突っ切って
飛んでくるはずの青い
鳥を捉える
瞬間を

爪先立ちになって
見えたぶんの風景は
背伸びのぶんだけ
おとなになった
ときには
すでに失われている

傘なんて
持たなければよかった


4.

部屋中に浮遊する
くらげのひとつに頭をあずけた
みみもとに口をちかづけ
眠るように言う

くじらに
なりたいと願っていた
幼い記憶を
懸命に指で
さぐっては
眠りにつくまでの話を続ける
海の底ならこれ以上
濡れなくてもいいのだと
天井に浮かぶ無数の波紋を
描きながら
言う


5.

雨上がりの朝日が
風景を全て
漂白してゆく
原色の傘たちが
ヴェランダに咲いて
乾いた本のページが
ささやきをはじめる瞬間を
夢みて
青白い両手を
祈るように組んでは

ちいさく
かなしむ



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