八月の再生/
哀詩
私が彼を見たのは初めてのことですが
その背中は何故か懐かしく、故郷を思わせたものです。
私は首巻に吹き込んだ吐息の蒸気に眼鏡を曇らせ
薄らむ視界の中心のその男が
如何にかして振り向きはしないものか、と
心中を賑わせていました。
すると後ろで娘が一泣き、
目前の男が振り向くと
それはまるで湖の水面を滑る煌きのような瞳で
私を見透かし、女を見ました。
息み足で私の左側をすり抜ける男からは
白い水仙花のような香りがしたのです。
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