僕は世界に旗を掲げる/たりぽん(大理 奔)
 
  かなしくてもしあわせでも
  かぜはいつかあめになってしまう

僕の知らないところでも
発電風車をすり抜け
ロウソク工場の煙をながし
ビルの隙間で口笛を響かせ
千切れた段ボールを蹴飛ばし
ずいぶんと遠いところまで
だけど
僕は知らない

   かなしくてもしあわせでも
   ひとはいつもあめになってしまう

いたずらに枯葉を飛ばし
ありったけの大使館の旗を吹き
峠のタルチョをはためかせ
瓦礫の街で口笛を響かせ
渡り鳥と山稜を越え
砂漠の砂を踊らせる
ずいぶんと遠く
だけど

僕は知らない

  風と感じないけど
  吹いているものがある

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