かぶとむし通信/yo-yo
今夜も窓ガラスを
こつこつとノックする
かぶと虫だ
息子よ
きょうの収獲はいっぴき
絵葉書はいくども読んだよ
寝苦しい夜は流氷の夢でもみたいものだ
熊の肉と行者ニンニクをかじる
そんな半島の夏は
昆虫も飛べないほど短いのだろう
かぶと虫よ
おまえのことは手紙に書いておこう
角と角を闘わせた
そんな遊びを覚えているか
栄光は背中にしかなくて
ときには空をつかもうと足掻いたり
みじかい命が重そうに
ぶきように滑空してみたり
夏が終ればもう
息子よと
おまえに呼びかけるのも照れそうだ
ぼくのかぶと虫よ
かたく空の翅を閉じ込めたままで
その飛びたつ先へと
やがて通信も途絶えるだろう
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