一行詩集「夏収め」/明楽
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夏の炭酸 弾けて抜けたら秋になる
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断頭台の露と消えそうな向日葵の首
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鳩胸で堂々押し入って来た夏が猫背になりこぢんまりと還ってゆく
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夕暮れの風に吹かれて嬉しげな 膨らみ始めた稲穂の群れ
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カナカナ蝉が引き寄せる夜の帳に秋の色
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夜に差し込む虫の声 秋の音連れ忍び足
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全裸で踊り明かした夏が過ぎ 薄絹まとう秋が来る
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夏に流し忘れた涙が秋のこころに染み渡る
八
夏が終わって何かが終わり
夏が終わるから何かが始まり
夏が終わらないと何にも始まらないから
だからさよなら さよなら 夏
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