そうやって終わる夏/タマムシ
 
足踏みをしていたら
後ろから吹いてきた風に追いこされてしまった

きっとわたしは
まだ夏のままでいたかったのだと思う

だってまだ海にも行っていないし
夏服の気に入ったのも見つけていないし
靴底から伝わってくる秋の気配も知らないから


集中豪雨の中


交差点でゆっくりと進もうとする緊急車両の
サイレンがけたたましく鳴り響いて
わたしは自分を取り戻す

ゆっくりと歩き始めて
ずぶぬれになったからだの隅々から
大切にしようとしていた夏がすり抜けてゆくのを

そっと見送った

そうでなくてはいけないと
誰に教わったわけでもないけれど

次の季節に
淡い恋心は隠すことができないから

わたしは歩く

考えるのは
一歩ずつ進んでからにしよう
  
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