「僕の村は戦場だった」を傍らに置いて/千月 話子
 
  「愛あるいは天使のような」

どこまでも続くかのように広がる
白樺の森を抜けて 僕は行くよ


アナスタシア 揺り椅子で眠る
君の失った右足の膝下に
赤い 赤い 靴を置いた
はにかんだ笑顔が空に登る
さようなら 僕の可愛い・・・


朝靄に浄化された白い森を
男と女が 隠し絵のように駆け抜けて行く
霧がレース状を形取ったものを
アムール(生まれたばかりの)と呼ぶのなら
彼らに纏わり付く 甘い濃厚な花の香りを
エロス と呼ぶのだろう


僕達のアムールは 未成熟のまま
戦場の黒い煙の立ち込める
汚れた空へ消えて行ってしまったのだけれど
爆風で脱力
[次のページ]
戻る   Point(8)