夜、視力/嘉村奈緒
夜の頃
いよいよ視力を盗まれて 往生する そう幾つもない階段を
丁寧に降りていく 16,17,18,19,と数えていった
山の神様が 遠い方からしょっぱい種を飛ばし
加速しながら降りていく 彼らはささむけながら
華麗に着地するまで むけながら 白く
白く
冬眠の方法を教わることもなかったし 林立する犬張子
お前は小さい前倣えをしながら地道に けれども誠実な縮め方だ
ささむけている種を 視力が盗まれていなければ
私が拾い上げてそっと土を被せたというのに
この目 夜の 数えている階段を
子どもたちの嬌声が突進してきて 散り散りになる
犬
張子(16,17,18,19,とささむけていったあの白い種から悪いものが出るのかも)
山裾を引きずるような抗いがたい松明の一行
(悪いものがひとつずつ消して行く)
そうしてこの夜 確かに降りていたはずなのに
てんでばらばらになったお前は
破けたまま
これから濡れるにまかせて 辛抱強く過ごすというのか
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