手紙を出しに/二瀬
 
荒らされていた

そんな耳鳴りが瞳の水面を揺らし始めたので、
どこからが家で
どこからが路なのかよく分からないまま
不可抗力が私を通り越して、髪をばらばらにした
あと一歩、左に傾けば
星空宛への切手が貰えるのだと知った

捨てられると分かったような子犬の目をして、
死にたいのです死にたいのです死にたいのです
そう嘆いては赤信号でしっかり止まり
義務観念ですから
とお互いに言いたがっているようなぼやけた群衆の隙間を、
白い封筒を抱えて、ゆっくりと通り過ぎていった



2008. 5. 20
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