蝉と木/tomtom_poem
さるもすべる空のもと
街路にさるすべりの木
つよい色香を
はげしい陽光で
まっかにむれた
花群
あこがれの女優が
かいまみせた
きゃしゃなうで
さわってはこわれるような
すこしめくれて
にくがみえそうな
みきに
母恋い蝉が
とどまっている
おきているのかいないのか
しょうきでいるのかいないのか
なくまでもなく
むずがるまでもなく
すべりおちないで
たたずんでいて
人々いぜんに
人造機械に
ほりおこされ
ふみかためられ
つちからすいあげた
母の樹液をすいに
ぼんような蝉は
めをあけた
こえをかけた
なにごとかはっしたようにきこえた
もういちどはなしかけた
もうめをとじている
はねをさすろうとした
まんぞくしているようだった
蝉と木はじゅうぶんに
愛をたしかめあっていた
戻る 編 削 Point(0)