ブロッコリーをなげつけろ/詩集ただよう
木やったよ、あんた、箒ちゃぺえぺえやからね。」
お祖母さまはもぐもぐと茶を含み、全くと言っていい程私の方を見られなかった。私は昨晩知り得たお祖母さまの好物であったという物に手を触れ、父上の言葉を思い出していた。
「好きな物は覚えとんのなあ。けど、それは覚えとんのかなあ。」
―「とおーう。」
ベッドの上に広く立ち上がりお祖母さまはブロッコリーをちぎっては窓の外へ投げておられた。家訓であった。私は心に深く座し、ベッドの下から尿瓶を取り出すべく籠を引いた。館内では最早勇名勇士なるお祖母さまへ宛てられたリボン付きのブロッコリーがそこにはあった。たくさんあった。私もたくさん投げた。次々に投げた。
馬鹿め若者、敢えて遠くに忍ばせた我が自転車、その初速に苦悩しろ。この先の坂で貴方は何を思う。ははは。は。右へ左へ蛇行する私を若者は俊敏たるスニーカーをタタタタ鳴らし、十ミーター後ろを激しく追随す。左へ右へ蛇行しつつも、焦燥しつつ駆け下りていき、途中何度も確かめる。若者と二度も目が合い、必然として、背を向ける。あの栄光の予定地点を過ぎてしまえば、この下りには何もない。
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