ブロッコリーをなげつけろ/詩集ただよう
 
日の食卓。中央に置かれた洋皿には、苦しくも青々と茹がかれたブロッコリーが整然と並んでいた。

甲斐塾で学を忍ばせた帰り道、私は足を急がせていた。兄上との約束でその日はお祖母さまに会いに行く日だったのである。私は学帽を玄関引き戸の脇に置き、ちぎりもせずにおいた一房のブロッコリーを握りしめ駆けたのであった。
着くと、どうやらお祖母さまは部屋におられぬらしく、受付婦人に連れられ外へ出ると、お祖母さまは他の皆と体操をしておられた。いっちにっさんっしっ、とリズミカルに膝を曲げ、伸ばし、手を、広げ、アルプスの少女の笑顔を私へ向けた。歓喜満ち満ち溢れた私は後ろ手に野菜を隠し、空一杯に手を振ったのである
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