イカ・セミ・バッタ/tomtom_poem
 
イカが身投げをするという
夜も明けきらぬ浜辺に
それは自分のせいではない
波のせいだ
卵を産み子孫を残すには匂いが必要だった
深い海の底は何も匂わない
母たちは求めて浮上する
そして波に飲まれる
溺れる幼児と同じだ
産卵のため深海から浮上し
波打ち際に寄りすぎて戻れなくなるんだ
子供を置き去りにして
母のみ人間界に打ち上げられ
人に掴まれてヒューと水を吹く

きょうもセミの仰向けの死骸が散らばっていた
白昼堂々
バタリと落ちる
きのう侵入した奴はどうしただろう
コトリとも音がしない
まだ室内にいるはずだが
子供が心配する
どこかに転がっていやしないかと
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