ビブラート/たかぼ
 
られているのかもしれないではないか」確かにそうだ
。だが空は触れないということで定義されるはずだ。それが実在し
ようとしまいと、触れたらそれは空ではない。だが私は高台に上り
空に触れてしまった。もちろん事態はそれだけではない。遙か彼方
の景色。そこにもまたここと変わらぬ日常があると誰もが思ってい
るだろう。だが遙か彼方は存在しない。なぜなら私は遙か彼方にも
触れたから。私は知った。事態は壁の形をしている。私は箱の中に
いる。どうやら我々を支配する超自然的な力を信じるしかなさそう
だ。私は無神論者ではないがそれは神ではないだろう。悪意を感じ
る。憂鬱な気分だ。メスを呼ぶこの羽の音も今は虚しく響くばかり


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