晩夏五節/Utakata
こどもの形をしたたましいが
腕の中で
あいまいにほどけてしまう
4.
お互いの
刃物のような肩甲骨に触れ合っては
その奥にあるはずの一対の羽根を
さがす
うすら寒い雨に浮かんだ
蝉の亡骸を踏みつぶした足の
感触を
どうしても拭い去れないまま
裸の二の腕に浮かぶ水滴に
首筋が粟立つのを見る
5.
いつのまにか空が
手が届かないほど遠くなったことに
屋上で気付く
壊れかけたラジオが
どこか諦めた声で昔の歌を唄い
つづけている
紙飛行機のような飛行機を
眼の端で見送ったあとで
瞼の裏に風を受ける
いつか見た蜻蛉が
閃いたカーテンの隙間から
音楽室の
紙屑の上に静かに止まる瞬間を
夢見る
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