晩夏五節/Utakata
 


1.

五線譜の上に
真夏の
影を溶かし込んだ
日焼けのあとに そっと
くちづけをする
あけはなした窓から吹きこんでくる
セピア色に塗り固められた
チャイムの
残響


2.

台風で
空が黄色く濁っている
雷が鳴るたび
決まって誰かが耳障りな口笛を吹く
暗室の中で身を寄せ合った
植物たちがちいさく
からだを震わせては
粘つく花粉が
息を潜める窓硝子を
緩慢に窒息
させていく


3.

眠れないままに
押し潰されて死んでいった
さかなのかたちをした夜の
青白い
腹を一撫でして
羽虫のような
水銀灯の灯りの下で
こど
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