「名も知れぬ花」/広川 孝治
 
真っ赤に並んで咲くつつじの中に

青い小さな花をつけた一本の野草を見つけた  

日に照らされ赤々と誇らしげな中に  

可憐な青い灯火を掲げ  

しゃんと背筋を伸ばす  

はかなげな茎は      

そよ風にも揺れる  

がっちりと枝に支えられた  

つつじの花と違って      




しばらくの間  

そこを通るたびに  

ささやかな姿を見るのが  

僕の楽しみになった      




ある時  

綺麗に掃除された花壇から  

その姿は消えていた  

きっと引き抜かれたのだろう  


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