野球/木屋 亞万
 
憶などひとつぶに濡れて
大地に沈んでしまえばいい


いつか大地に流れ去った
最初で最後の夢のように
活躍もできず期待もされず
少しの気遣いで試合に出場し
居た堪れなくなった死後の帰還
自信なんてなかった
才能なんてなかった


ただ野球が好きだった
いつだって夢や希望は
雨の中に流れ去ってしまう
それが心地よく感じてしまうくらい
泣いているのか死んでいるのか
わからないほどぐしゃむじゃになる


右胸の奥には割れた軟球
足元にはいつも深い穴

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