「軟弱者」/広川 孝治
うだろう
この間
久しぶりに出会った君は
あの頃と変わらぬ笑顔を
大人の化粧で縁取っていた
お互いの左手に光るRINGは
時の流れを教えてたね
吹き抜ける秋の風が
君の持つ香りを
僕の鼻先へ届けてくれた
年甲斐もなくどきどきしたよ
君の肩へ手を伸ばしたかった
なんだかんだ言って
食事を一緒にして
そのまま飲みに行った
君はずいぶんと酔ったね
そして愚痴をこぼしてた
旦那さんの浮気のことや
次々繰り返す借金のこと
かなり溜まっていたんだろ
やがてとうとう酔いつぶれ
机に突っ伏す君の姿を見つめてた
頬がほんのり桃色で
引かれたル
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