一途坂/星月冬灯
 
蜃気楼

 もう蝉の声も遠い


 いつまで続くのだろう

 この坂道は


 すべてを裏切って

 伴侶(ひと)を欺き傷つけて

 苦しみの罰を受けても

 なお貴方に惹かれてゆく

 哀しい女の情念


 此処は蜃気楼なのか


 ならばいっそ消えてしまいたい

 陽炎のように

 蜃気楼の中に溶けて

 いつしか空気になれたら


 銀の指輪をそっと

 袖にしまって

 私は坂を上る

 貴方が待っているあそこまで

 
 ただひたすらに


 私は女ーーー


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