日本人としてのイチロー、あるいは日本人になれないわたしたちについて/小川 葉
 
いふりをしてる
一本の木の
わたしたちは
もっと
自由に
両手を広げ
青葉をしげらせて
季節のように
人間らしく生きて
いけばよかった

イチローが
ヒットを打った
それは
三振でもなく
アウトでもなく
ホームランでもなく
それ以上でも
それ以下でもなく
とにかく
ヒットをひとつ
またひとつ打って
生きている

その精度で
生きる制度を
たしかめている日本人が
そこで生きている

海の向こうで
ただ、ひとつの海の
向こうだけで
 
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