夏色日記より/銀猫
 

あの日の高い空と
りんどうの青むらさきを覚えている
明日からのひとりを
蜜のような孤独だと
わたしは微笑んでいたと思う


傍らの古いラジオが
虫の声のように囁き
夏色を少しずつ消して
日焼けの肩を白く戻しては
わたしをまた裸にする

その緩い時の流れは
擦り傷だらけの手足を、
頑なな瞼を、
やわらかく撫で
弱々しく泣かせてくれるはずだ


鎖骨にできた、
ちいさな水溜まりが乾く頃
わたしは髪を切って
何処かの川辺りから
赤茶けた記憶と一緒に流そう

   
   風が止んだ
   庭草の匂いが
   熱の名残を語る


早く、
早く九月になれば







戻る   Point(10)