「昼下がりの憂鬱」/紫音
 
目の前に広がる光景は
ぎらりと反射するガラスだらけのビルのおかげで
わずかに十メートル先で遮られ
その隙間にさえ
絶え間なく人が流れ
流れ
意識の濁流が茹だる暑さで朦朧とする
流れ
流れ
いつからこんなにも人が多いのだろう

裏道に入れば
昼間なのに閑散として
廃墟のようなボロ喫茶があるだけで
開いているのか
それとも空いているのか
それさえもわからない
こういう店のコーヒーは当たり外れが大きいから
要注意だ
テストの山勘と同じくらい
外れたショックはでかい
当たればラッキー
だから
同じくらいに外れてくれるのが泣ける
入るべきか入らざるべきか

[次のページ]
戻る   Point(3)