りんご/
小川 葉
友だちの
りんご畑から
りんごを盗んでしまった
十数年後
街でばったり
友だちに会った
一緒にお酒を飲んだ
ふところには
あの日のりんごが
ひとつあった
りんごは食べなかった
これからも
食べることはないだろう
どうして
盗んだりしたんだろう
喉がかわいた
わけでもなかったのに
またお酒を飲もうと
約束して別れた
けれども
約束が守られることは
もうなかった
りんごだけが残った
盗んでしまった
真っ赤なりんごが
ひとつだけ
残ってしまった
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