第三次短歌大戦/ピッピ
 
年号は覚えやすいねにせんはち年におこった(できごと)ならば



蛙の降る梅雨も終わって空蝉の降る夏の瀬も埋葬されて



上階に行けば行くほど高くなるベランダに立つ柵の高さは



よもすがら一人で寝てるだけなのにチェリーソースの来ない八月



2を入れてぶっ壊そうか0と1だけで出来てる街にさよなら



コーヒーのゼリーに何度もスプーンを入れるみたいにいなくなる人



いつ見ても真っ赤なペンキに見えなくて山手線で渋谷に向かう



「言(ゆ)う」「言(ゆ)う」と君は言(ゆ)ったね君の手を結うのも言葉程度の温度



また明日 ニュースで流れるテロだけがテロだと思わないほうがいい



幸福を書き留めておく赤ボールペンの芯だけ減らないままだ



部屋の剃刀の理由を「毛の処理」と言おうか本当のことを言おうか



ビー玉を命の代わりに蹴飛ばしてだんだん欠けてゆく帰り道



やなことが凝縮されたしあわせが毎日それとなく続いてる
戻る   Point(8)